著しいマンション価格の高騰や利上げ機運の高まりなどから、2026年の住宅市場はこれまで以上の「激動」が予測されます。コロナ禍を経たこの数年間で、暮らし方や働き方が大きく変わった人も多いことでしょう。近年は、住宅にかかわる法改正も相次いでいます。だからこそ、マイホームを検討する際には、価格や立地だけでなく、ライフスタイルの変化や次世代の住宅性能、そして契約の在り方まで、多角的に見極める必要があります。
そこで今回は、2026年の新春予測として(一社)リノベーション協議会 会長でu. company(株)代表の内山博文(うちやま ひろふみ)が、マイホーム購入戦略を前後編2編に分けて紹介。前編では中古戸建てが今年の「本命」となる理由について述べました。
後編となる本記事では「中古戸建て購入+リノベ」を実施する際の3つのポイントを解説します。
1. 【Point1】物件の選択肢をちょっとだけ広げてみる
住宅価格の高騰などにより予算に合う物件が見つかりにくい現在は、視野を少し広げてみることで新たな選択肢が生まれることもあります。
マンション派は一戸建てにも目を向けてみる
法改正やガイドラインの策定もあって、マンションは近年、大規模修繕を含め、しっかりと資金を積み立てながら修繕計画を立てるようになりました。多くのマンションは段階増額積立方式(修繕積立金の額を新築当初は低く設定し、数年ごとに段階的に引き上げていく方式)で修繕費を積み立てているため、年数が経つにつれて修繕費は値上げされていくのが一般的です。
特に最近は物価高などから管理費、修繕積立金の値上げ率が上がっています。住宅ローンの返済額だけで資金計画を立てると、管理費や修繕積立金、駐車場代の負担で家計が苦しくなる可能性があります。一戸建ても自身で修繕費を積み立てていく必要がありますが、トータルコストを比較すると、意外にも一戸建ての経済合理性が高いことに気づくはずです。
前編でも紹介した通り、2025年7月から9月の東日本不動産流通機構(レインズ)のマーケットレポートによれば、首都圏の中古戸建ての成約件数は、前年同期比54.3%増と7期連続で増加しています。一方、成約価格は前年比0.6%とほぼ横ばいながら3期連続で下落しました。52期連続で価格上昇が続く中古マンションと比べると割安感が際立っており、需要がマンションから戸建てへと移行している様子が数字からもうかがえます。
<キーワード解説・用語集>
修繕積立金<マンション管理についてもっと詳しく>
中古マンションの修繕積立金が3.1%引き上げで負担増! 今後上がりそうなマンションの見分け方マンションは近年、狭小化が進んでおり、ファミリータイプで60㎡前後の物件も少なくありません。ライフスタイルの持続可能性という点においても、一戸建てのほうが優位性は高いと言えるでしょう。
また、一戸建ては「貸しにくい」というイメージがあるかもしれませんが、暮らし方や働き方の変化もあって、近年は「戸建て賃貸」も注目されています。集合住宅と比べて賃貸物件が少ないこともあって、ニーズが高まっています。
立地を再検討してみる
暮らし方や働き方の変化は、マイホーム選びにも大きく影響するはずです。毎日出社する必要がなくなった人も多く、これからの時代は必ずしも交通利便性の高い立地が正解とは限りません。たとえば1駅ずらす、あるいは1度乗り換えを挟むエリアも探してみることで、予算内に収まる物件が見つかることもあります。また、駅からの距離の許容範囲を広げてみるのもいいでしょう。
もちろん、駅から遠いほうがいいというわけではありませんが、交通手段や移動に対する先入観を疑い、住環境や教育環境、家の広さなどを重視することで、無理のないちょうどよい住まい選びができることもあります。
立地・広さ・築年数に加え「建物の性能」を必ずチェック!
これからの住まい選びでは、立地や広さといった条件と同じくらい、あるいはそれ以上に「建物の性能」が重要になります。その理由は大きく3つあります。
1)命と資産を守る「耐震性能」:最新の被害想定が示す現実
大規模地震や水害などの多発化や激甚化を背景に、「耐震性能」の重要性も高まっています。 2025年12月、内閣府は「首都直下地震の被害想定」を約10年ぶりに更新・公表しました。(参考:内閣府「首都直下地震対策(2025年12月19日公表)」)
最新のシミュレーションに基づくこの報告の主旨は、「地盤の特性」に応じた対策と「建物の耐震化」が、被害軽減の決定打になるという点にあります。地盤の良し悪しを確認するだけでなく、中古住宅において「最新知見に基づいた耐震診断・補強」を行うことが、命と資産を守るためには欠かせません。
2)将来の光熱費高騰に備える「省エネ性能」:快適性に加え、健康維持・長寿命化も
日本では光熱費の負担が上昇傾向にあるものの、欧米諸国に比べればまだまだ低水準です。しかし、原子力発電所の問題や国際的に脱炭素を推進している状況などを鑑みると、将来的に光熱費の単価を上げざるを得なくなるシーンも考えられます。そのため、これからの住まい選びでは、一定以上の「省エネ性能」が必ず求められるはずです。
このように、エネルギー価格の不安定化や脱炭素社会への移行を考えると、省エネ性能はもはや必須条件です。高性能な住宅は快適なだけでなく、毎月のランニングコストを抑え、住む人の健康維持や建物の長寿命化にも寄与します。
<キーワード・用語解説>
省エネ基準3)2026年から始まる「減税」の経済的メリット
さらに2026年からは、物件の「省エネ性能」が住宅ローン減税の控除額を左右します。ZEH水準などの高い省エネ性能を満たす中古住宅は、住宅ローン減税の控除期間が新築同様の13年間に延長されます。
最大控除額は400万円を超える規模(子育て世帯等の場合)になり、建物の性能を確認することは、快適性だけでなく、数百万円単位の経済的メリットに直結する時代になったと言えるでしょう。
<2026年度税制改正についてもっと詳しく>
新築同等まで拡充!2026年度住宅ローン減税で「中古住宅」が優位に!? !改正の内容と手続き・必要書類を解説2. 【Point2】「合理的で早い」中古住宅購入+リノベを見極める
木造戸建ては特にリノベーションの自由度が高く、見た目だけでなく、断熱性能や耐震性能を高めることも可能です。一方で、「フルリノベーション」に限らず、既存の建物を活かした改修や自己実現のための部分的なリフォームも可能です。
<キーワード・用語解説>
リノベーション木造住宅は自由度が高い
中古戸建てを実際に見に行くと「自分のライフスタイルに合わない」「生活しにくそう」といった印象から「やっぱりマンションや新築がいい」と思うこともあるかもしれません。しかし、中古戸建ては大胆な改修が可能で、多くの人がイメージする以上に、自分のライフスタイルに合ったリフォーム・リノベーションが実現できる可能性を秘めています。
日本の伝統工法の在来工法で建てられた木造住宅は、柱や梁で建物を支える構造のため、リノベーションの自由度が高いという特徴があります。極端な話をすれば、1階と2階の要素をすべて入れ替えるような改修も可能です。
改修の自由度は、マンションより圧倒的に一戸建てが上です。マンションの一室の省エネ性能を高めるといっても限界がありますが、一戸建てなら、たとえ築古であってもリノベーションで現行の基準を上回る省エネ性能に向上させることもできます。
<古い建物をリノベーションした事例についてもっと詳しく>
「他人間相続」がこれからのトレンドに!? 一つのリノベーション作品から見る中古住宅の可能性「自分たちの求める暮らし」を追求する
リノベーションをすることで「自分たちらしさ」や「自分たちにとっての暮らしやすさ」を追求することもできます。もちろん購入時だけでなく、変わっていくライフスタイルや家族構成に適応させるためにリノベーションするのも効果的でしょう。特に自己実現したい人や創造性を発揮したい人などには、中古住宅購入+リノベーションが向いています。

既存の建材や雰囲気を活かしたリノベーションを検討してみる
中古住宅には、中古住宅ならではのよさがあります。既存のよさを活かしながら省エネ性能を向上させたり、最新の設備を入れたりすることも可能であり、それが面白さでもあります。サーキュラー・エコノミー(循環経済)的なリノベーションは、最近のトレンドの一つでもあります。
たとえば、瓦屋根は耐震面とのバランスを考慮する必要があるものの、漏水のリスクが非常に低く、古い瓦屋根を活かしたデザインにすることで屋根の葺き替えのコストが抑えられ、将来的な漏水のリスクを軽減することができます。断熱に関しても、既存の壁の内側に断熱材を足して性能を高められます。近年では「部分断熱」という概念も生まれ、生活の中心となる空間だけ優先的に省エネルギー性能を高めるような手法も増えてきています。
すべてを一新することだけがリノベーションではありません。むしろリノベーションには志向性が求められ、再利用や既存のものを活かすという考えを持つことで、より合理的な選択肢となりえます。既存のものを活かすことができればコストを抑えながら、工期も短縮できる可能性が高まります。
安心して任せられるリノベーション会社を探す
「できる改修とできない改修」や「改修を要する部分と残せる部分」は判断しにくく、加えてすべてのリノベーション会社が希望する改修に対応できるとは限りません。安心して任せられるリノベーション会社を見極めるのは容易ではありませんが「リノベーション協議会」や「性能向上リノベの会」といったしっかりとした理念を持っている団体に登録している加盟店かどうかは、信頼性を判断する一つの要素となってくるでしょう。
またこうした団体に加盟していなくても、相談の段階で親身になってくれるリノベーション会社があるはずです。中古住宅選び、すなわち建物の見極めから伴走してくれて、課題を解決する手段を多く持っているようなリノベーション会社に任せることをおすすめします。
<プロに任せることの境界線についてもっと詳しく>
DIYで愛着の湧く家づくり!中古住宅のリフォームとメンテナンス「自分でできること・プロに任せること」の境界線は?3. 【Point3】業界慣習や不動産会社の事情に惑わされず、しっかりチェック!
住まいを選ぶうえでは、物件そのものだけでなく、不動産会社やリノベーション会社選び、「安心」を付帯するための検査(インスペクション)や保険を検討することが大切です。業界の慣習や不動産会社の事情に惑わされず、主体性を持ってチェックしましょう。
契約前に「検査」できるか、瑕疵(かし)保険の加入有無・可否を確認
不動産会社にしてもリノベーション会社にしても、建物の表層だけを見て建物の状態を判断できる人はいません。検査済証の有無や修繕、メンテナンスの履歴などを見たうえで、検査(インスペクション)を実施して、はじめて建物の状態やリノベーションすべき箇所などが見えてくるものです。特に木造の一戸建ては、隠れた不具合がある可能性もあり、表層だけを見て状態を判断してはいけません。
<インスペクションについてもっと詳しく>
中古戸建て・中古マンションの 「検査」「インスペクション」って?何を検査する?中古住宅の「検査(インスペクション)」って何をするの?検査の流れやプロが使う道具を紹介!
契約前に検査(インスペクション)できるかどうかは、非常に重要な物件の見極めポイントです。中古住宅は売主が個人の場合、事業者(不動産会社)の場合と比較してリスクが高い傾向にあります。売主が契約不適合責任を負う期間が一般的に数週間から数ヶ月程度と短かったり、そもそも免責されていたりするためです。購入後のトラブルやリスクを軽減するには、瑕疵(かし)保険への加入の有無や可否を確認しておくことも大切です。
<契約不適合責任についてもっと詳しく>
民法の改正で売主の負担がUP!?リスクを回避する方法を専門家が伝授現在は買主が引渡後に補修を行うことで瑕疵(かし)保証を利用できるサービスも一部にあるため、スケジュール上、引渡しまでに補修を完了することが難しそうな場合には検討してみましょう。
<引渡後の補修で利用できる瑕疵(かし)保証についてもっと詳しく>外部サイトへ移動します
中古住宅の売買で「瑕疵保証(かし保証)」が受けられるの?(住宅あんしん検査編)「物件選び」よりも大事な「不動産会社選び」
2024年4月から、不動産会社と媒介契約を交わす際に建物状況調査のあっせんの可否を示さなかった場合、契約書にその理由を明記することが不動産会社に義務づけられています。
<キーワード解説・用語集>
媒介契約<媒介契約約款改正についてもっと詳しく>外部サイトへ移動します
建物状況調査のあっせん「無」には理由が必要に―2024年4月1日より媒介契約書が改訂しかし、検査(インスペクション)や瑕疵(かし)保険については、まだ会社によって温度差があるのが現状です。十分な知識を有していない会社や、実施・加入に積極的ではない不動産会社も少なくないため、瑕疵(かし)保険制度(不動産会社が瑕疵保険を利用するには、国土交通省が定める住宅瑕疵担保責任保険法人への登録が必要)に事業者登録しているかどうかも確認しておきたいところです。
<不動産会社選びについてもっと詳しく>
中古物件の見学で見るべきなのは物件だけではない?不動産会社選びと聞くべきこと、物件を内覧するときの心構えとは「長期優良住宅制度」や「住宅性能表示制度」を積極的に活用する
「長期優良住宅」とは、長く住み続けられる家を普及させるために、国が定める劣化対策・耐震性・省エネ性などの基準を満たした住宅を認定する制度です。一方、「住宅性能表示」は、住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)に基づき、安全・快適な住宅を安心して取得できる市場形成を目指し、第三者機関が客観的に住宅性能を評価して断熱性能や耐震等級などを表示する制度です。
両者は目的・評価項目・優遇措置こそ異なりますが、共通する評価項目も多く、検査(インスペクション)など第三者の客観的な評価が入っているという点は、住まいの購入を検討する際の安心材料の一つとなるでしょう。
個人的に一戸建ての検査(インスペクション)や住宅性能表示はもっと以前から義務化すべきだと思っていますが、現状は検査(インスペクション)しなくても、また住宅性能表示がなくても住宅ローンを使えるため、表向きには不便なことはありません。しかし、慣習的に不要なものでも、特に第三者の目を通していない物件が多い一戸建てに関しては、安心・安全な暮らしや長期的な資産性を考慮すれば、より積極的に検査(インスペクション)実施をしておきたいところです。
2026年からの新制度で13年間の住宅ローン減税を受けるためには、建物が省エネ基準を満たしていることを示す「住宅省エネルギー性能証明書」等が必要です。契約後に慌てないよう、検討段階からこれらの書類の取得までサポートしてもらえそうか、不動産会社やリノベーション会社に確認しておきましょう。
<中古戸建ての見極め方についてもっと詳しく>
「中古戸建てって本当に大丈夫?」不安を払拭&目利きをするための3つのポイント事前に契約書・重要事項説明書の内容をチェック!
不動産会社は、契約時に物件や取引に関する重要事項を説明さえすれば、宅地建物業法に定められた義務を果たすことができます。法律では、重要事項から予測されるリスクなどを説明する義務までは課していません。
しかも、多くの場合、重要事項説明は契約の場で慣習的に行われるものです。重要事項説明や契約書の内容を受け、疑問に感じたところなどを納得するまで質問する時間を持つことも難しいため、できれば売買契約書や重要事項説明書は契約の前にもらっておき、事前に疑問点や不安な点を解消してから契約に臨むべきでしょう。
<売買契約書についてもっと詳しく>
中古住宅の売買契約時「まさか!」の盲点と契約書チェック重要ポイント104. 激動の時でも、自分らしく暮らせる資産価値の維持・向上につながる住まいを
住宅価格の高騰や金利上昇、度重なる法改正など、住宅を取り巻く環境は大きく変化しています。自分らしい暮らしができて、なおかつ安心・安全で、資産価値の維持・向上にも期待できる住まいを選ぶには、価格や立地だけで判断するのではなく、リノベーションの可能性から不動産会社、リノベーション会社の姿勢、契約の内容まで総合的に見極める必要があります。
激動の時代でも後悔しない選択をするために、検査(インスペクション)や瑕疵(かし)保険も検討しながら主体性を持って判断していきましょう。