中古住宅は新築と比べて安価に購入しやすい一方で、「見えない不具合や費用」に不安を感じる人も少なくありません。実際に、ハウスドゥブランドで不動産事業を全国展開する(株)And Doホールディングス(以下、ハウスドゥ)が2025年に実施した「中古住宅購入に関するインターネット調査」では、「見えない不具合」が中古住宅購入前の不安として最も多く挙げられました。
本記事では、同調査結果を受け「中古住宅の見えない不具合」の不安を解消する方法を(一社)住宅あんしん検査の片野隆裕(かたの たかひろ)が解説します。
1. 中古住宅に潜む「見えない不具合」と「費用」の実態
中古住宅の「見えない不具合」や「費用」への不安は、データを見ると多くの人が実際に経験していることがわかります。まずは実態を把握していきましょう。
中古住宅購入の1番の不安は「見えない不具合」
ハウスドゥが2025年10月に出したプレスリリースによると、中古住宅を購入した人に対する「購入前の不安」という設問のうち、最も割合が高かった回答が43.3%の「見えない不具合(雨漏りやシロアリ等)の有無」だったことがわかりました。
同調査によれば、75.9%が初めてのマイホーム購入ということです。プロでなければリスクを見極める経験や知識を持ち合わせている人はそれほど多くはないでしょう。不具合のサインを見落としてしまうことも十分に考えられます。

「メンテナンス費用」は中古住宅の盲点になりやすい
「自宅に中古住宅を選んだ理由」という設問に対して最も多かった回答は、「予算的に手頃で新築より購入費用を抑えられるため」で41.0%でした。たしかに新築住宅は昨今、著しく高騰していることもあって、中古住宅は値頃感があります。一方で、中古住宅は築年数が経っている分、メンテナンス費用が別途必要になるという点は理解しておきたいところです。

修繕やリフォームにどの程度費用がかかるのか
先の通り、同調査では購入前の不安のうち「見えない不具合の有無」が最も回答割合が高くなりましたが、それに次いで高かった回答が37.9%の「修繕やリフォームにどの程度費用がかかるか」というものでした。実際に、同調査によれば「購入後に大規模なリフォーム・リノベーションを実施した」のは32.1%、「一部修繕・リフォームを実施した」のは26.3%と、半数以上の人が購入後になんらかの手を入れているようです。
加えて同調査では、購入後に感じている不満や後悔についてもたずねています。その結果、「当初想定より修繕やリフォーム費用がかかったこと」が27.1%、「予期していなかった不具合が購入後に見つかったこと」が24.6%という回答も見られました。
国土交通大臣が指定する住宅専門の保険会社「住宅瑕疵担保責任保険法人」が中古住宅の売買を安心して行えるように提供している仕組みとして、基本構造部分などに不具合があった場合の修繕費用を補償する中古住宅売買向けの「瑕疵(かし)保険」という制度がありますが、その保険金が支払われた事故は、漏水や雨漏りなどが多い傾向にあります。
特に築25年以上の木造一戸建てでは、外壁材や屋根材の経年劣化などによる防水機能の低下に起因するものが多い状況です。さらに、築10年以内の建物でも、新築時の施工不備などにより事故が起こる場合もあります。以下のように、損害額は概ね100万円前後にのぼります。
| 事故区分 | 部位 | 損害額 | 住宅区分 | 事象 | 原因 |
|---|---|---|---|---|---|
| 雨水浸入 | サッシ | 126万5,000円 | 一戸建て | 2階出窓および3階窓廻りからの雨漏り | サッシ廻り、屋根庇付近のコーキング不備、透湿防水シート、防水テープの施工不良 |
| 雨水浸入 | サッシ | 98万7,731円 | 一戸建て | 1階窓廻りからの雨漏り | サッシ廻り、外壁透湿防水シート、防水テープの施工不良 |
| 雨水浸入 | バルコニー排水 | 122万4,190円 | 一戸建て | バルコニーの排水ドレイン周辺からの雨漏り | 適正な材質ではない鉄製の排水ドレインを使用しており、腐食によりドレインが割れてしまった |
| 雨水浸入 | 屋根 | 124万3,880円 | 一戸建て | 玄関ポーチ屋根からの雨漏り | 玄関ポーチ屋根のパラペット笠木内部の透湿防水シート、防水テープ、外壁土台水切りの施工不良 |
| 雨水浸入 | 屋根 | 132万7,394円 | 一戸建て | 1階内壁に水染み | 折版屋根の水下端部、防水テープによる止水措置の施工不良 |
| 雨水浸入 | 屋根外壁取合い | 139万2,563円 | 一戸建て | 1~3階天井に雨染み | 屋根と外壁取合い部、ルーフィングの立上り不足、雨仕舞板金の立上り不足 |
| 給排水管路 | 配管 | 120万1,530円 | 一戸建て | 2階トイレ天井に水染み | 3階トイレ給水管(VP管)接続部の差込不足、接着剤の塗付不良 |
| 給排水管路 | 配管 | 83万3,800円 | マンション | システムキッチン下部から雑排水が逆流して漏水 | 食洗器排水管の止水処理(キャップ止め)が未処理 |
(図表:住宅あんしん検査調べ)
割合としては木造一戸建ての事故発生率が高いですが、マンションでも給排水管路などの事故が発生しています。

購入直後に修繕費用がかからなかったとしても、住まいのメンテナンス費用は定期的にかかるものです。新築から築30年までのメンテナンスコストは、将来にわたり1,000万円以上に及ぶという試算もあるようです。あらかじめこの金額を予算に組み込んでおくことで、安心・快適に住み続けることができるでしょう。
<メンテナンス費用についてもっと詳しく>
中古住宅の「メンテナンスコスト」を見込んだ資金計画とは? 購入時はもちろん、所有中の人も必見!
2. 中古住宅の内見時にチェックしておきたいポイント
専門知識がなくても、内見の際に自分の目で確認できるポイントは意外と多くあります。物件を訪れる前に以下のチェックポイントを頭に入れておくことで、不具合のサインを見落とすリスクを減らせるでしょう。
一戸建ての外壁
外壁は、劣化事象が現れやすい部分の一つです。一戸建ての外壁仕上げは、「乾式タイプ(「サイディング」と呼ばれる板状の外壁材を張り合わせるなど、組み立てによって外壁を作る工法)」と「湿式タイプ(水を混ぜた素材を乾燥する前に塗付して外壁の下地を作る工法)」の2つに大別されます。
乾式タイプのサイディングの場合は、サイディングとサイディングの継ぎ目に充填されている「シーリング」で劣化状態を確認しやすく、ヒビ割れていたり、手で押すと固くなっていたりすると劣化が進んでいるサインです。湿式タイプの外壁のほうは、窓の周りの四隅や外壁のコーナー部などにヒビ割れが入りやすいため、重点的に見ておくといいでしょう。
ただし、ヒビ割れがあるからといって必ずしも重大なリスクが潜んでいるわけではありません。リスクが高いのは、表層のみならず深層にまで到達している深いヒビや幅が広いヒビ、複数箇所に及ぶヒビです。不安な場合は、後述の検査(インスペクション)を“セカンドオピニオン”代わりに活用するのもおすすめです。
一戸建ての屋根
屋根も劣化事象が現れやすい部分となります。最上階(2階や3階)の屋根を上から見ることは難しいですが、玄関上など1階部分に屋根があれば上階の窓から見下ろすことができ、屋根の劣化状況(コケやサビ、割れなど)を確認できるはずです。
また「軒の出」という屋根の先端がせり出ている部分を下から見上げることで、屋根の裏面に水シミがないかなどを確認できます。ひどい場合はシミどころではなく、雨水を含んで屋根の裏面が膨張しているケースもあります。
マンション
マンションの外壁周りは共用部にあたります。バルコニーに出て、外壁や床の状態を確認してみましょう。バルコニーなら、タイル仕上げであればヒビ割れや剝離を起こしていないか、塗料が塗られているのであれば剝がれていないかを間近に見ることができます。 併せて、マンションの場合は長期修繕計画も確認しておきたいところです。劣化が進んでいたとしても、修繕する予定があれば一定は許容できるのではないでしょうか。
3. 「中古住宅購入の不安」を解消するための具体的な方策を紹介!
内見時のセルフチェックである程度の状態は把握できますが、専門的な判断はやはりプロに委ねるのが安心です。検査(インスペクション)や瑕疵(かし)保険を活用することで、より不安を軽くした状態で中古住宅を購入することができるでしょう。
検査(インスペクション)とは
中古住宅の「見えない不具合」の不安を解消するためには「検査(インスペクション)」が効果的です。ただし、一口に“検査”といってもその種類はさまざまで、大きく分けると次の3つに分類されます。
- 一次的な検査(インスペクション)
- 現状把握のための基礎的なインスペクションで、目視、計測および非破壊検査により劣化事象の有無を確認するもの(宅建業法の定めに基づき不動産売買時に行うものを「建物状況調査」と言います)
- 二次的な検査(インスペクション)
- 不具合箇所を修繕しようとする際に利用。破壊検査を含めた詳細調査により劣化事象の発生範囲や原因を判断するもの
- 性能向上検査(インスペクション)
- 性能向上リフォームを実施する際に利用。リフォーム実施前後に検査・調査を行い住宅性能(耐震、省エネ性能等)を把握するもの
いきなり詳細な検査(インスペクション)を申し込むと、費用がかさむうえに準備の負担も大きくなります。まずは(1) の一次的な検査(インスペクション)である「建物状況調査」から始めてみるのがおすすめです。

上述の一次的な検査(インスペクション)、建物状況調査とは、具体的には、所定の研修を受けた建築士が第三者的な立場から、国土交通省の定める既存住宅状況調査方法基準に基づいて、構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分の劣化状況の有無等を把握するために行うものです。
買主自身が内見時等に外壁や屋根の状態、基礎のヒビ割れや水シミの有無などを目視で確認することも可能ですが、発見した劣化事象が深刻かどうかの判断や特別な器具を使用した建物の傾きのチェックなどは難しいものです。一方、建物状況調査はプロが実施するため、一定の安心感が得られます。
<キーワード解説・用語集>
インスペクション<インスペクションについてもっと詳しく>
中古戸建て・中古マンションの 「検査」「インスペクション」って?何を検査する?中古住宅の「検査(インスペクション)」って何をするの?検査の流れやプロが使う道具を紹介!
<建物状況調査についてもっと詳しく>外部サイトへ移動します
住宅あんしん検査の『建物状況調査』特設サイト建物状況調査は「健康診断」のようなもの
建物状況調査はプロによる調査であり、実施によって一定の安心が得られるものの、壁などを破壊して行う調査ではなく、すべての箇所を隅々まで見るものではありません。したがって、調査で不具合などが見つからなければ安心というわけではなく、建物状況調査は定期的な「健康診断(法定健診)」に近いものだと思います。
人間の健康診断も数値などが悪い箇所が指摘され、そこからさらに詳細な検査を受けたり、治療を受けたりしますが、建物状況調査も実施さえすれば安心というものではありません。
また建物状況調査を実施すれば「今後5年〜10年は心配なし」と将来についても安心だと誤解する人もいますが、建物状況調査はあくまで実施時点の劣化状況を確認するものです。将来の不具合発生を保証するものではないことにも注意が必要で、物件購入後は定期的に点検をおこない劣化事象に応じた修繕をおこなっていく必要があります。
さらなる安心につなげるには瑕疵(かし)保険加入がおすすめ
さらなる安心につなげるには「既存住宅個人間売買瑕疵(かし)保険」への加入がおすすめです。瑕疵(かし)保険は、中古住宅の検査(インスペクション)と保証がセットになった保険制度。中古住宅の個人間売買を対象とし、対象住宅の検査を実施した事業者が被保険者となり、保険契約は国土交通大臣が指定する住宅瑕疵担保責任保険法人が引き受けます。建物状況調査が健康診断とすれば、瑕疵(かし)保険は万が一の備えである「医療保険」のようなものです。
保険法人による検査を受けたうえで劣化事象等が発見された場合は、前述の二次的な検査(インスペクション)に当たる調査を行い、調査結果に応じた修繕工事をすることで瑕疵(かし)保険に加入できます。保険の対象となる部分は、構造耐力上主要な部分および雨水の浸入を防止する部分、給排水管に関する特約が付される場合はこれに加えて給排水管路です。シロアリの害は瑕疵(かし)保険において免責事由となることが一般的であり、このリスクに対しては、床下点検を依頼する、防蟻工事を実施するなどの対策が有用です。
<シロアリの害についてもっと詳しく>
引渡し後にシロアリ被害が発覚し「契約不適合」に!? トラブルを避けるために必要な対策とは?中古住宅購入費用を抑えるなら、税制優遇を活用
前述の通り、建物状況調査の実施や瑕疵(かし)保険への加入で、見えない不具合への対策や修繕・リフォームにかかる費用の把握以外にも、「予算的に手頃で新築よりも購入費用を抑えられる」という中古住宅の魅力を活かすという点から言えば、各種税制優遇の活用も見逃せません。
現在、国は中古住宅の流通活性化のためにさまざまな施策を実施しています。その中の1つが住宅ローン減税です。2026 年度(令和8年度)税制改正によって、中古住宅の住宅ローン減税を大幅に拡充しました。これまで中古住宅の控除期間は10年間、借入限度額は最大3,000万円でしたが、省エネ基準に適合しているなど一定の省エネ性能を有する中古住宅ならば、控除期間は最長13年間、借入限度額は最大4,500万円。効果は最大で400万円以上になります。
<住宅ローン減税についてもっと詳しく>
新築同等まで拡充!2026年度住宅ローン減税で「中古住宅」が優位に!? 改正の内容と手続き・必要書類を解説なお、省エネ基準に適合することを証明する書類の1つに「住宅省エネルギー性能証明書」があります。(一社)住宅あんしん検査では、建物状況調査業務だけでなく築15年程度以内の中古マンションを対象に、この「住宅省エネルギー性能証明書」の発行サービスを行っています。「住宅省エネルギー性能証明書」の発行によって、改正の恩恵を最大限、享受できる可能性がありますから、是非、取得を検討してみてください。
<キーワード解説・用語集>
住宅省エネルギー性能証明書<住宅省エネルギー性能証明書についてもっと詳しく>
中古住宅向けの「住宅省エネルギー性能証明書」とは?(2026年入居向け)4. 建物状況調査・保険でトラブルを回避できた事例3選
次に、建物状況調査や瑕疵(かし)保険によってどのようなトラブルが回避できるのか、具体例を見ていきましょう。
1.建物状況調査ではわからなかった劣化事象が後から見つかり保険金支払いの対象になった
建物状況調査は目視によるものが中心で、すべての箇所をくまなくチェックするものではありません。引渡し後、リフォーム工事会社の詳細調査で雨漏りの跡や重大なヒビ割れが確認されることもあります。
建物状況調査後に不具合が発覚すると「調査は無駄だった」というトラブルに発展することもありますが、先の通り建物状況調査は「絶対」ではありません。こうした場合に備えて瑕疵(かし)保険に加入していれば、原因によって修繕費用が補償される可能性があるため、建物状況調査というものを正しく理解し、結果にかかわらず保険の加入を検討してみましょう。
2.過剰なリフォームを避けられた
建物状況調査は、中古住宅購入後の修繕やリフォーム費用の概算を出すためにも役立ちます。建物状況調査でわかるのは劣化事象の有無となりますが、今後の安心のために更なる調査や修繕すべき箇所を把握できます。建物の劣化状況等がわからない状態でリフォーム会社に相談しても、リフォーム費用の概算は提示してくれるかもしれませんが、安心のための修繕よりも見た目重視のリフォームプランができあがってしまうこともありますし、過剰なリフォームを提案される可能性も否定できません。
建物状況調査を実施する会社と、実際に工事を施工する会社は別であることが一般的です。建物状況調査を受けたうえでリフォーム会社に相談することで、改修の優先順位がつきやすく、過剰なリフォームも避けられます。また、調査の結果を基に複数社から見積もりを取得しましょう。リフォーム工事を対象とした瑕疵(かし)保険の制度もあるので、それを利用している事業者を選べば、さらに安心と言えるでしょう。
3.築浅でも建物状況調査によって新築時の施工ミスが発覚することも
一部の注文住宅など意匠性が高い住宅の中には、建築的な納まり以上にデザインを重視した部位を含むことがあります。たとえば、壁が垂直ではなく傾斜したデザインに設計されている場合などは、一般的な納まりと異なるため施工が難しく、雨水の浸入を防ぐ工事の難易度が上がります。こうした住宅は、たとえ築浅であっても部分的に劣化が進んでいることがあり、実際に調査をすると納まりが悪い部位に劣化事象が見つかりやすい傾向にあります。
また、最近多く見られますが、軒がほとんど出ていない住宅は、軒の出がある住宅に比べて雨水が外壁に当たる範囲が広くなるため、劣化が進行しやすい傾向にあります。もちろん意匠性が高く雨水が壁に当たりやすくても、それを考慮した仕様で設計していれば問題ないのですが、新築時の設計や不十分な施工が建物状況調査によって明らかになることも少なくありません。
近年は住まいの省エネ性能に対する要求が高まっており、断熱性能の高い住まいが増えていますが、雨水の浸入や壁内の結露の問題などが後回しになっている側面もあります。「築浅だから安心」とは言えないため、どの築年帯の住宅であっても建物状況調査の実施や保険への加入を検討してみてください。
5. 中古住宅の「見えない不具合」への対策を知り、不安を軽減して購入検討を進めよう
中古住宅の「見えない不具合」への不安は、人間でいうところの健康診断や医療保険のような「検査(インスペクション)」や「瑕疵(かし)保険」によって軽減されます。また、検査(インスペクション)を実施することで、盲点になりやすい購入後のリフォーム費用や将来にわたるメンテナンスコストの概算も見え、過剰なリフォームの抑制にも繋がります。「わからないから不安」を「対策して安心」に変えることができれば、中古住宅はより魅力的な選択肢となるはずです。