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夏の暮らしが変わる“断熱DIY”のススメ。自分の手で家を涼しくする工夫

内山 章

日本の夏の暑さは年々厳しくなっており、毎年6月〜8月の平均気温も明らかな上昇傾向にあります。消防庁によれば、2024年5月〜9月に熱中症で救急搬送された人の数は調査開始以降、過去最高の10万人超を記録し、その約4割は住居で発生しています。また、電気代の高騰が続く中、「今年の夏は昨年より光熱費が上がるかも」と不安に思っている人も多いのではないでしょうか。

こうした状況の中、改めて見直したいのが住まいの断熱です。「断熱性能を高める」と言うと大規模な工事をイメージしがちですが、数千円で試せるものなど、手軽に「DIY」でできることも少なくありません。そこで本記事では、(株)エネルギーまちづくり社の内山章(うちやま あきら)が、夏の暮らしが変わる断熱DIYの方法や効果などについて詳しく解説します。

(画像:内山章)

1. 夏こそ始めたい断熱習慣!「住まいの断熱」現状と効果

断熱は冬の寒さ対策だけでなく、夏の暑さ対策としても効果的です。特に古い住宅は断熱性が低い傾向にあり、夏の暑さを感じやすいのが特徴です。断熱性能を高めることで、エアコン効率の向上や光熱費削減にもつながります。

古い家ほど夏の暑さは厳しい傾向にある

2025年4月から原則すべての新築住宅に省エネ基準への適合が求められていますが、中古住宅は断熱性能が低い住宅が目立ちます。2025年時点で、住宅ストックの23%がほぼ無断熱。現行基準を満たしている既存住宅は19%にすぎません。

古い住宅のサッシは、断熱性能の低いアルミを使用したものが多く、窓ガラスも1枚のガラスで構成された単板が主流です。総じて古い住宅ほど断熱性能が低く、夏の暑さが感じられやすい傾向にあります。冬は着込めば暖が取れますが、夏は逃げ場がないため、より対策が必要とも言えるでしょう。

図1:日本の住宅の断熱化率(住宅ストック約5,400万戸の断熱性能)
※1:省エネ法に基づき平成4年に定められた基準
※2:省エネ法に基づき昭和55年に定められた基準
国土交通省調査によるストックの性能別分布を基に、住宅土地統計調査による改修件数および事業者アンケートによる新築住宅の性能別戸数の推計を反映して算出。2025年度(令和7年度)時点で住宅ストック(既存住宅)のうち現行基準を満たしている住宅は、わずか19%(画像出典:性能向上リノベの会

「断熱」は寒さだけでなく夏の暑さにも効果的

「断熱をすると余計に夏が暑くなるのでは?」とよく聞かれます。「断熱性能を高める=布団を厚くする」というイメージからの質問だと思いますが、実際には断熱性を高めることで「魔法瓶」のような家にできると考えるとよいと思います。

魔法瓶は、熱いお湯は熱いまま、冷たい水も冷たいままです。つまり、断熱性能を高めれば外からの熱の影響を受けづらくなるため、エアコンの効きがよくなり、夏も快適に過ごしやすくなります。断熱は、1年を通して住まいを快適な温度に保つために有効な対策です。

注意したいのは「断熱すれば自動で快適」ではないことです。ライフスタイルに合わせてエアコンなどの設備を有効活用し、温度・湿度の調整のほか通風や換気をしながら自分たちで使い方を考えることが大切です。

また、夏の暑さ対策には、断熱とともに日差しのコントロールも重要です。どんなに断熱をしても部屋の中に夏の太陽光がさんさんと降り注ぐようでは内部に熱がたまるばかりです。逆に冬は、日差しをできる限り室内に取り込んで大いに活用すれば暖房の補助になります。太陽光をうまくコントロールすることで断熱を生かした省エネに繋がります。

古い家に多く見られる深い「庇(ひさし)」は、夏の高い日差しを遮り、冬の低い日差しは取り込める素晴らしい仕組みです。庇が浅い、またはほとんどない建物の遮熱については、季節に応じて取り外しのできる「すだれ」や「よしず」の活用が有効です。詳細は後述します。

図2:深い庇
深い庇は、夏の高い日差しを遮り、冬の低い日差しを室内に取り込む(画像:エネルギーまちづくり社

暑さ対策だけではない!断熱によって得られる効果

(株)エネルギーまちづくり社は、公的機関の断熱改修も多く実施しています。たとえば、学校の断熱改修の例だと、暑さ・寒さが和らぐだけでなく、エアコンが常時フル稼働しなくなったことで音や風による不快感が減り、生徒の皆さんから「勉強に集中しやすくなった」という声をもらうこともあります。

住宅であれば、断熱性能を高めることで、エアコン1台で家中を快適な温度にすることも可能です。エアコンの風が直接当たる場所も時間も減らすことができるので、より快適に過ごせるようになります。

断熱の効果は、光熱費の削減や体感温度の違いだけでなく、高血圧症やヒートショックの予防にもなることがデータから実証されています。ほかにも、アレルギーやぜんそく症状の緩和も期待できます。

夏こそ始めたい断熱習慣!住まいの断熱の現状と効果
  • 古い家ほど断熱性能が低く、夏の暑さは厳しい傾向にある
  • 断熱性を高めることで魔法瓶のような家にできる。寒さだけでなく、夏の暑さ対策としても効果的
  • 断熱性能の向上によって得られる効果は、快適性だけでなく、光熱費の削減や高血圧症、ヒートショックの予防など多岐にわたる

2. DIY初心者でも効果が出る「夏の断熱・遮熱3大アクション」

夏の暑さ対策では、熱の出入りが大きい「窓」の対策が特に重要です。DIYでも、内窓の設置やすだれ・よしずの活用、隙間テープによる気密対策など、手軽に始められる方法があります。数千円程度から取り組めるため、初心者でも挑戦しやすいのが魅力です。

最も効果が大きいのは「窓の対策」

住宅の熱は、屋根や床、窓など建物を覆う「外皮」から出入りします。夏は窓などの開口部からの熱の出入りが全体の約7割を占めているため、窓の対策が最も効果的です。

DIYでできる窓の対策の中で最も効果が高いのは「内窓」の設置です。最近はホームセンターで5,000円ほどから「内窓キット」が販売されているので、プロに頼まなくても手軽に制作・設置が可能です。内窓キットは、窓部分になる中空ポリカーボネートの板と塩化ビニルなどの枠で構成されています。いずれもカッターなどで切ることができるため、窓の大きさに合わせることが可能です。

図4:内窓を制作している様子
工具の取り扱いに注意すれば小学生でも制作可能(画像:内山章)
内窓は既存の窓の内側に取り付ける(画像:内山章)

内窓の効果が大きい理由は、既存の窓との間に空気層が生じるためです。「空気」はあらゆる物質の中でもトップレベルで断熱性が高く、空気層が断熱材の役割を果たすことで熱の出入りを抑えます。

一方で、内窓を設置すると窓の開閉が少し面倒になります。開け閉めの頻度が低い窓については、中空ポリカーボネートをはめ込むだけでも効果的です。また、内窓並みの性能を持つ「ハニカムブラインド」を取り付けるのもおすすめです。

図5:中空ポリカーボネートをはめ込む様子
開閉頻度の低い窓なら、中空ポリカーボネートをはめ込むだけでも効果的(画像:内山章)
冬の寒い日には、ガラスのみの窓の表面温度は10.7℃だったが、内側に中空ポリカーボネートをはめ込むと15.4℃まで表面温度が上昇(画像:内山章)

遮熱対策としては、ホームセンターなどで売っている窓に貼って遮光・遮熱できるシートならDIYで取り付けられます。一定の効果が期待できますが、前述の通り、夏は効果的でも、冬は遮熱すると太陽光からの熱を取り入れられなくなります。また、遮熱シート自体に断熱性能はないので、それだけでは逆に寒くなってしまうので注意が必要です。そして遮熱シートは、網入りガラスなどに貼ると、熱膨張の差でガラスが割れる「熱割れ」現象が起きるリスクもあります。

夏の対策として「すだれ」や「よしず」は日射を遮ることができ、ホームセンターで1,000円程度から購入できます。熱対策として窓の内側より外側で行うほうが約4倍、熱の入り方が変わります。室温で言えば6〜7℃下がる程度の効果があるとされており、室内側のブラインドやカーテンより有効です。取り外しも簡単なので、シーズンごとに気軽に使えるのも魅力です。

図6:すだれ・よしず
「すだれ」(左)や「よしず」(右)をマンションの掃き出し窓に活用したイメージ(画像:PIXTA)

マンションの場合、ベランダは共用部にあたり、何かを取り付けるのは難しいため、私は物干し竿にすだれを垂らす方法をよくおすすめしています。フックや結束バンドなどで取り付けることができ、高さ60cm〜70cmでも効果的です。特に西向きの場合は効果が大きい遮熱対策です。

天井は屋根からの熱をいかに遮断できるかが大事

窓に次いで夏の熱の出入りが大きいのは天井です。夏の暑い日の屋根は、環境によって80℃程度に達することもあるため、夏の対策で言えば天井の断熱は床以上に優先度が高いと言えます。

多くの日本の一戸建ては、押し入れの天井から屋根裏を覗けるようになっていますが、自分で屋根裏に断熱材を入れるのは簡単ではありません。できないことはありませんが、高所作業で危険も伴うため上級者向けです。

図7:屋根裏に断熱材を入れている様子
押し入れからではなく屋根の一部を切り屋根裏に進入(画像:内山章)
隙間なく断熱材を入れることが大切(画像:内山章)

DIYするなら、天井に両面テープなどで直接貼ることもできるボード系の断熱材を使う方法があります。一戸建てだけではなく、マンションの最上階などでは屋上面からの熱の影響が大きいので、そういった断熱材を張り込む方法も有効です。施工は簡単ですが、見た目が断熱材そのものであまりよくないので一時的にしのぐためによいと思います。

見落としがちなドアや窓の「隙間」を埋める

断熱は、基本的に「気密」とセットで考える必要があります。断熱で熱の伝わる量を少なくし、気密を高めることで空気の出入りを防ぎます。衣服にたとえれば、セーターを着込むのが断熱です。ただ、それだけでは毛糸の隙間から風が吹き込んできて寒いから、ウインドブレーカーを着る。これが気密性を高めるということです。

日本の家は、断熱性も気密性も総じて低く、言ってみれば冬は裸にカイロを貼って暖めているようなものです。気密性を高める対策としては、窓やドアなどの開口部の隙間に、ホームセンターで販売している隙間テープを貼ることなどが挙げられます。ただし、トイレのドアの下などは換気のために隙間が空いていることもあるので注意してください。

盲点になりやすいのが、玄関ドアの隙間です。玄関ドアの周りに付いているピンチブロックというゴムのパーツは、経年劣化して固くなり、隙間が生じていきます。このパーツを取り替えたり、隙間テープで埋めたりすることで、気密性が高まります。窓のサッシも経年によって気密性が落ちるので、やはり古い家ほど気密性は低い傾向にあると言えます。

図8:断熱・気密のたとえ
衣服にたとえれば、断熱はセーターを着ること、気密はウインドブレーカーを着ること(画像:内山章)
DIYで家を涼しくする「夏の断熱・遮熱3大アクション」
  1. 窓に「内窓」を自作する ポリカ板で空気の層を作り、家を”魔法瓶”にする
  2. 窓の外に「すだれ」や「よしず」をかける 日射を外で遮るのが鉄則。カーテンより4倍効果的
  3. 天井や隙間から入る「熱」を断つ 熱がこもる天井や壁に断熱材を貼り、窓やドアなどの隙間から出入りする空気を遮断する

3. 「DIYの限界」とリフォームだからできること

DIYでも一定の効果は期待できますが、窓ガラスやサッシ交換などはプロによる施工が必要になるケースもあります。断熱性能は気密や換気とも密接に関係しているため、施工方法によっては結露やカビの原因になることもあります。必要に応じて、補助金制度を活用しながら専門家に相談するのがおすすめです。

窓ガラス・サッシの交換

内窓の設置やフィルムの貼付などはDIYでできますが、窓ガラスやサッシの交換となると、プロに頼まなければならないことがやはり多くなります。日本の住宅の窓の約7割が、1枚ガラスの「単板ガラス」と断熱性能が低い「アルミサッシ」で構成されています。単板ガラスを「ペアガラス」に、アルミサッシを断熱性能が高い「樹脂サッシ」にリフォームすることで、断熱性は格段に向上します。サッシは変えず、窓ガラスだけを変えるリフォームも効果的です。

図9:窓は「壁にあいた穴」
日本の木造住宅の約70%が断熱材の厚さ0.2mm相当の「アルミ窓×単板ガラス」で断熱性が低い(画像出典:YKK AP

近年、窓の断熱改修に対する国の補助金制度は非常に充実しており、2026年も「先進的窓リノベ2026事業」で窓ガラスやサッシの交換、内窓の設置が手厚く支援されます。この補助金の申請手続きはリフォーム事業者が行う必要があり、施主個人が自分自身で行うことはできない点には注意してください。

窓は本来、「光・眺め・換気」の機能別に役割分担して配置・設計するものです。欧米では、採光と眺めを目的とした「開かない窓」も多く、全ての窓を開け閉めするのはアジア圏に根強い文化と言えます。日本では実際に開け閉めしている窓は限られていることが多いため、その窓が持つ機能を見極め、たとえば見た目や使い勝手を損ねたくないリビングの掃き出し窓の断熱改修はリフォーム会社に頼み、小さい窓や開け閉めの頻度が低い窓はDIYで対策するのもいいかもしれません。

換気の見直し

近年、断熱性能の向上に目が向けられている一方で「換気」はなおざりになりやすい状況です。結露やカビの発生については、断熱だけでなく、換気も大きく影響します。とはいえ、なかなか個人では判断できない部分ですので、吸気口や換気扇が抜けるルートの有無、換気システムの種類をプロに確認してもらいながら、必要に応じて換気システムの追加の設置や性能向上も検討してみてください。

プロの知識や見解を施工に反映できるか

見た目や暮らしやすさを損なわずに断熱性能を向上させたり、気密や換気まで最適化するには、やはりプロの知識や見解は不可欠です。近年は、窓の改修だけでなく断熱材の施工に対する補助金も充実しているため、費用を抑えながらプロの手を借りることができます。

DIYは、自身でホームセンターなどに行って商品を選び、自ら取り付けるものなので、お店で商品の説明などをしてもらうことはできても、個別の事情や現在の状況、要望を踏まえたアドバイスはもらいにくいのが実情です。たとえば、気密や換気が甘く、断熱材の貼り方が不十分などDIYの施工精度が低いと、壁の中や天井裏、床下などで「内部結露」を引き起こす原因となる可能性もあります。内部結露は、目に見えないながらも確実に構造部を蝕んでいきます。不安を感じる場合は、迷わずプロに相談することをおすすめします。

「DIYの限界」とリフォームだからできること
  • 窓ガラス・サッシの交換
  • 換気の見直し
  • プロの知識、個別の事情や現在の状況、要望を踏まえたアドバイス

4. 断熱は“故障しない投資”。DIYすることで1年中快適な、愛着のある住まいに

断熱改修は非常に費用対効果が高く、目先の光熱費の削減にとどまらず、長期的には設備更新費用の削減にもなります。断熱性能を高めることで、そもそも取り付けるエアコンの台数などを減らすことができ、それが将来的な設備更新時の費用削減にもつながります。また、医療費の削減につながるという事実もあります。

断熱は一度設置すると、正しく施工すれば30〜40年は持つものです。そのような意味では、投資効果の高いリターンが得られる唯一の建材とも言えるかもしれません。暮らしの快適性や住む人の健康にも寄与することを考えれば、最も合理的な投資と言えるでしょう。

家に手を加えることで愛着も高まり、細かな調整やある程度のメンテナンスも自身で対応可能です。必要に応じてプロの力も借りながら、この夏はぜひDIYに挑戦してみてください。