中古住宅は、管理や修繕が行き届いている物件もあれば、新築時からほぼメンテナンスをしていない物件まで、状態はさまざまです。また、売主が認識しておらず、不動産仲介会社にも気づかれなかった構造部分などの不具合が、引渡し後に発覚し、深刻なトラブルに発展する可能性もゼロではありません。
そこで今回は、さくら事務所のホームインスペクターで一級建築士の松島 伸行(まつしま のぶゆき)が、中古住宅の購入後に起こりやすいトラブルとその回避策、解決方法を解説します。
1. 中古住宅の購入でよくある5つのトラブル
まずは、中古住宅の購入でよくあるトラブルから見ていきましょう。
1.雨漏り
雨漏りというと屋根からというイメージがあるかもしれませんが、大半の要因は外壁の経年劣化です。外壁は常に外気にさらされているため劣化しやすく、特に外壁材と外壁材の隙間に施工されるコーキング材のヒビなどから雨水が浸入し、雨漏りに至るケースが多く見られます。
木造の家は、一般的に10〜15年ごとに外壁の再塗装などが必要ですが、メンテナンスせずに売却される中古住宅も少なくありません。また、新築時の施工不良が主な要因となることもあるため、築浅だからといって安心とは限らない点にも注意が必要です。
図1:中古住宅の雨漏り事例

2.漏水
漏水も中古住宅で多く見られるトラブルの一つです。蛇口など、目に見える範囲で漏水している分にはすぐに気づくことができますが、床下などで漏水していると構造躯体にも被害をもたらしている可能性があります。
特に空き家になっている住戸では発覚が遅れ、深刻な事態になることも。空き家の期間が長いほど、そのリスクは高いと言えるでしょう。
図2:中古住宅の漏水事例

3.シロアリ被害
シロアリは、木造住宅の大敵です。被害にあうと、耐震性や耐久性が落ちる可能性もあります。
2000年以降に建築された木造住宅の基礎はコンクリートで覆われた「ベタ基礎」が主流のため、シロアリ被害のリスクが比較的低いのですが、それ以前に建てられた木造住宅では、地面の土が露出した基礎構造となっていることもあります。
漏水も中古住宅で多く見られるトラブルの一つです。蛇口など、目に見える範囲で漏水している分にはすぐに気づくことができますが、床下などで漏水していると構造躯体にも被害をもたらしている可能性があります。
シロアリ被害は居住中でも発覚しないことがあり、売主も気づかないまま引き渡されるケースも少なくありません。
<シロアリのトラブルについてもっと詳しく>
引渡し後にシロアリ被害が発覚し「契約不適合」に!? トラブルを避けるために必要な対策とは?図3:中古住宅のシロアリ被害事例

4.設備の故障
一見すると問題なさそうな電気設備や水周り設備も、いざ使おうとすると正常に作動しないことがあります。設備類の耐用年数は製品によって異なるものの、おおむね10〜15年程度です。
内見時には設備の動作確認を依頼しにくいかもしれませんが、売買契約時までにしっかり確認・検査しておくことが大切です。
5.越境
中古住宅の売買で起こり得るトラブルは、建物の劣化や不具合に起因するものばかりではありません。隣の敷地に屋根や雨樋(あまどい、屋根を流れる雨水を軒先に集め、地上に流すもの)など、建物の一部が越境している場合、今は問題なくても将来的に隣地の所有者と揉める要因になる可能性があります。逆に隣地からの越境物が見られることもあります。
敷地の間にある塀やフェンスが越境していることもあるため、見た目だけで越境は判断できません。なんらかの越境物がある場合は、隣地と協議のうえ建て替え時に越境状態を是正するよう取り決められていることが多いですが、中には黙認されていて覚書が交わされていなかったり、認識自体されていなかったりすることもあります。
図4:中古住宅の越境事例

<越境のトラブルについてもっと詳しく>
越境トラブルで土地・一戸建てが売れない!? 実例から学ぶ経緯と対応策2. さらに!あまり知られていない中古住宅3つのトラブル
あまり知られていませんが、中古住宅の購入では次のようなトラブルも見られます。
1.傾き
どのような建物であっても、わずかながら傾きはあるものです。しかし、大きく傾いている家で暮らすと、めまいやふらつきなど、心身の不調を感じることもあります。
建物が大きく傾く理由は主に2つで、1つは地盤の沈下によるものです。弱い地盤を補強せずに重量のある建物を建てると、次第に沈下していきます。これは、傾斜地や擁壁のある土地で多く見られる事象です。住まいを建てる前の地盤調査が事実上義務化されたのは、2000年4月。それ以前の中古住宅は特に注意が必要です。
もう1つの主な傾きの要因は、経年によるものです。木材は経年によってたわんだり、変形したりします。たとえば、1階に広いリビングがあり、2階は複数の居室がある間取りだと、2階の重みを支える壁などが1階に足りず、床が次第に傾いていきやすくなります。
図5:中古住宅の傾き事例

2.違反増築・違反リフォーム
増築などによって、売主が知らない間に違反建築物になっていることもあります。リフォーム内容やリフォーム工事をした施工会社によっては、容積率や建ぺい率をオーバーしていたり、建築確認申請を出していなかったりすることも。構造計算をせずに増築したことで、建物の一部に負荷がかかり、危険な状態になっているおそれもあります。
また、違反建築物を購入する場合、融資が受けられないケースもあります。金融機関も気づかず融資が下りたとしても、購入後にリフォームする際に既存不適格の部分の是正を求められるなど、困ることにもなりかねません。2025年4月に建築基準法が改正されたこともあって、違反増築や違反リフォームされた住宅の改修には大きな手間と時間、場合によっては費用もかかります。
<2025年4月の法改正についてもっと詳しく>
2025年建築基準法改正があなたのマイホームに与える影響とは? よくある誤解6選(売却を検討している人向け)2025年4月の建築基準法改正でリフォームにも影響が!?「4号特例」縮小で変わること(購入を検討している人向け)
3.見えない部分の被災
売主の知らないところで「実は被災していた」という物件も少なからず見られます。たとえば、床下浸水や地震による構造部の一部破損、台風時の飛来物による屋根や外壁の損傷、過去の火災による構造部の炭化などは、生活に支障がなければ売主が気づかないこともあります。
特に最近は台風やゲリラ豪雨が多発していることから、気づかずに床下に浸水していて、カビが大量に発生しているといったケースが増えています。被害に気づいて修繕していても、外見だけ補修され、内部に被災の痕跡が残っていることもあります。
3. 購入前にトラブルを避けるには?
中古住宅は価格面での魅力が大きい反面、完璧な物件は多くありません。トラブルが起こってからの対処には手間も時間もかかるため、何より事前に回避することが大切です。
内見時にチェック
購入前の内見で、一部の不具合などを見つけることができます。たとえば、外壁やコーキング材のヒビ、室内の雨染みなどは雨漏りのサインの一つです。
ただし、ヒビや染みがあったとしても、必ずしも雨漏りしているとは限りません。表層材のヒビであれば問題ないことも多く、室内の染みは雨漏りではなく結露によるものである可能性もあります。トラブルの兆候を見つけられても、それが深刻かどうかを正確に判断するのは難しいでしょう。
検査済証のある物件を選ぶ
検査済証のない既存建築物が建築確認申請を要する改修をする場合は、建築当時の法律と適合しているか、建物の現況などを調査する「既存建築物の現況調査(法適合の状況調査含む)」が必要です。一方、検査済証があれば簡易な現地調査だけで改修が可能なため、できれば検査済証のある物件が望ましいでしょう。
<キーワード解説・用語集>
検査済証<検査済証がない場合の対応についてもっと詳しく>
2025年4月の建築基準法改正でリフォームにも影響が!?「4号特例」縮小で変わること(購入を検討している人向け)2025年建築基準法改正があなたのマイホームに与える影響とは? よくある誤解6選(売却を検討している人向け、検査済証がない場合の詳細について記載)
不動産仲介会社がトラブルの有無を見極めてくれるとは限らない
中古住宅の売買でトラブルになりそうな事象があれば、不動産仲介会社が調査して買主に告知する必要があります。しかし、トラブルの兆候を見落とす、あるいは十分な調査を行わない会社・担当者も存在します。
また、売主側の仲介会社は基本的に売主の味方です。告知すべき事項を買主に告げないのは宅地建物取引業法違反ですが、売主の利益を損ないかねないトラブルやその火種まで詳細に調査してくれるとは限りません。
そのため、まずは信頼できる“買主側”のエージェントを見つけることが重要です。よさそうな物件を見つけても、物件の掲載元に直接問い合わせるのではなく、信頼できるエージェントを経由することをおすすめします。
<キーワード解説・用語集>
宅地建物取引業法信頼できるエージェントの見つけ方
信頼できるエージェントを見つけるにあたって、不動産会社の規模はほぼ関係ありません。大手だから安心というわけではなく、担当者の対応力や知識、誠実さが何よりも重要です。口コミを見たり、信頼できる人から紹介してもらったりすることで、自分に合ったエージェントを探しましょう。
優秀なエージェントを探すには、SNSやYouTubeを活用して情報収集するのも効果的です。相性もあるため、複数のエージェントと会ってみて決めるのがよいでしょう。トラブルなく中古住宅を売買するには、物件探し以上にエージェント探しが重要と言っても過言ではありません。
購入前に検査(インスペクション)を実施する
どんなに優秀な不動産仲介会社やエージェントだったとしても、あくまで不動産取引のプロであり、建物のプロではありません。越境などは調査できたとしても、建物の不具合、劣化からくるトラブルやその火種を見極めることは難しいため、購入前には検査(インスペクション)を実施し、建物のプロに物件の状態を見てもらうようにしましょう。
<キーワード解説・用語集>
インスペクション<検査(インスペクション)についてもっと詳しく>
中古戸建て・中古マンションの 「検査」「インスペクション」って?何を検査する?中古住宅の「検査(インスペクション)」って何をするの?検査の流れやプロが使う道具を紹介!
検査の結果次第では、住宅の基本構造部分を対象とする「瑕疵(かし)保険」に加入することもできます。保険の対象となる部位に検査で不具合などが発覚した場合、引渡し後に買主が実施するリフォームとあわせて補修することで保証が受けられる制度もあるため、リフォームを検討している場合などは要件を確認しておきましょう。
<キーワード解説・用語集>
既存住宅売買瑕疵保険<瑕疵(かし)保険についてもっと詳しく>
「瑕疵(かし)保険」ってなに?「瑕疵保険」が必要な理由とは。不動産会社によっては、独自の検査、独自の保証を付けていることもありますが、建築士が行う検査(インスペクション)や、国土交通大臣から指定された住宅瑕疵担保責任保険法人が扱う瑕疵(かし)保険とは異なるものも見られます。不動産会社の検査で問題ないとされる物件も、異なる実施者や検査(インスペクション)によって深刻な問題が発覚することもあります。
契約内容と実際の物件の状態が適合しているか、確認する
引渡し後に契約内容に適合していない不具合や欠陥が見つかった場合は、売主に「契約不適合責任」を追及できる可能性があります。「契約内容と適合していない」というのは、売買契約書や付帯する設備表、物件状況等報告書などと適合しているかどうかで判断されます。
したがって、契約時はこれらの書類と実際の物件の状態が合致しているかどうか、チェックすることが大切です。売買契約の場で細かくチェックするのは難しいことから、できれば事前に契約書類を送ってもらうようにしましょう。
契約不適合責任は、売主と買主が合意すれば条件を変えられる任意規定です。双方が合意すれば免責(売主が責任を負わない)とすることもできるため、売買契約書の特約事項もよく確認しましょう。一般的に、売主が契約不適合責任を負うのは引渡しから3ヶ月程度です。
<キーワード解説・用語集>
契約不適合責任<契約不適合責任についてもっと詳しく>
民法の改正で売主の負担がUP!?リスクを回避する方法を専門家が伝授4. 購入後にトラブルが起きたら、どうすればいい?
購入後にトラブルが起こったら、不動産仲介会社に連絡して状況を伝えましょう。契約内容や保証を確認し、必要に応じて専門家に相談することも大切です。
まずは記録を残す
後々、売主側に責任を追及する可能性があるため、まずは証拠を残しておくことが大切です。雨漏りや漏水であれば修繕の前に写真を撮っておき、隣地とトラブルがあった場合は経緯を記録。修繕に費用がかかった場合は、領収書などを取っておくようにしましょう。
契約不適合責任が追及できるか
契約不適合責任の期間内、かつ契約との不適合が証明できれば、売主に追完や減額などの請求ができます。不適合であることがわかれば、売主は修繕にかかった費用を負担するといった方法で責任を負います。不具合が見つかった場合は売主に直接連絡をすることは避け、まずは不動産仲介会社にトラブルの事実を伝えましょう。
ただし、修繕にかかった費用を全額負担してもらえるとは限らず、売主からも交渉が入ることがあります。たとえば、実際には補修に300万円かかったとしても、売主側でリフォーム会社を手配して見積もってもらったところ100万円と言われたことなどを理由に減額を要求される可能性もあります。
こうした事態に備えるためにも、やはり買主は購入前、さらに言えば物件検討前に自身の味方となる不動産仲介会社やエージェントを選び、仲介してもらうのが望ましいでしょう。売主の仲介会社が買主も仲介するとなると、トラブル発生時の交渉も売主優位になりやすくなります。
不動産仲介会社に説明責任はないか
契約不適合責任の期間が終わった後、もしくは契約不適合責任が免責となっている場合は、基本的に買主が自身で不具合などに対応するしかありません。ただし、不動産会社の説明責任を追及できる可能性があります。
説明責任を追及できるのは、法令上の制限や仲介会社が知り得ていた不具合や心理的に購入を躊躇しかねない事象などです。不動産仲介会社の対応に納得できない場合は、仲介会社が所属する不動産団体や自治体の不動産課などに相談しましょう。
瑕疵(かし)保険に加入している場合
保険の対象となるのは、基本的に基本構造部分(柱や基礎など構造耐力上主要な部分と、外壁や屋根など雨水の浸入を防止する部分)です。特約により、給排水管路などを保険の対象とすることも可能です。
<キーワード解説・用語集>
基本構造部分図6:瑕疵(かし)保険の対象

保険期間は最大5年間、保険金額は最大1,000万円。保険契約の対象となるトラブルが発生した場合は、すみやかに契約者(不動産会社か検査会社)に連絡しましょう。万が一、不動産会社や検査会社が既に倒産等していた場合には、保険会社に連絡します。なお、保険会社の承認を得ないで修補工事を行ったり、契約者が賠償金等を支払ったりした場合には、保険金が支払われない場合もあるので、保険会社と相談しながら対応することが大切です。
保険付き住宅であれば、売買や瑕疵(かし)保証に関するトラブルが生じたときに、電話相談・専門家相談のほか、紛争処理手続を利用することができるため、その面でも安心できるでしょう。
5. 中古住宅の購入におけるトラブルは、未然に防げる!信頼できるエージェント選びを
中古住宅は新築に比べて購入価格が抑えられる傾向にある反面、見えにくい劣化や不具合が隠れていることも多く、購入後に思わぬトラブルが発生するケースも少なくありません。そのため、信頼できるエージェントや検査機関の力を借りながら、一つひとつ丁寧に状態や契約内容を確認し「これで何かあったら仕方ない」と納得できるくらい慎重に進めていきましょう。
