買うコツ

リノベ費用高騰時代の「中古マンション購入+リノベ」賢い総予算コントロール術

滝川 智庸

ここ数年、新築マンション価格が顕著に上昇しており「中古マンション購入+リノベーション」を検討する人が増えています。一方で、近年は中古マンション価格やリノベーション費用も高騰しています。ただ、仕様が決まっている新築とは異なり、リノベーションはコストを柔軟に調整できるのが強みです。価格高騰下でも、工夫の余地は十分に残されていると言えるでしょう。

そこで本記事では、(株)インテリックス空間設計代表取締役社長の滝川智庸(たきかわ ともやす)が「中古マンション購入+リノベ」の総予算を抑えるコツを解説します。

1. マンションのリノベ費用の状況

リノベーションに使われる資材の価格は、2023年頃からじわじわと上昇してきました。さらに2026年2月には、中東情勢の緊迫化による「ナフサショック」が引き金となり、資材価格は一段と上がっています。

資材価格の高騰

ナフサ由来の資材だけでなく、これまで価格が抑えられていたものも、ここに来て適正な水準へと見直されてきている様子がうかがえます。ものにもよりますが、資材全体では、この2〜3年で10〜15%程度は価格が上がっている印象です。今後は20%、30%の上昇になっても決しておかしくありません。

図1:建設資材物価指数
2015年平均を100とした建設資材物価指数は、2026年8月時点で建設総合が150超に(画像出典:一般財団法人 建設物価調査会)

価格高騰の要因は?

建設コストは、長期的に上昇を続けてきましたが、背景にあるのは資材価格の上昇だけでなく、職人不足も少なからず影響しています。従来の費用ではなかなか人を雇えず、特に腕のいい職人は取り合いになっている状況です。

中東情勢は依然として不透明感が残るなか、人件費が今後下がる要因はなく、資材価格もまだ上がり切っていないのが現状です。国際情勢がどうなったとしても、今後リノベーション費用が下がる余地はほぼないでしょう。

マンションのリノベ費用の状況
  • 資材価格は2023年頃からじわじわと上昇。2026年のナフサショックを引き金にさらに上がっており、今後も上昇する可能性がある
  • 職人不足を背景とした人件費の上昇もあり、国際情勢がどうなったとしても、今後リノベーション費用が下がることはまず考えられない

2. 中古マンションリノベのコストカット術

リノベーション費用が高騰するなかでも、工夫次第で総予算は抑えられます。ここからは、中古マンションリノベのコストカット術を4つ紹介します。

1.残せるところは残す

キッチンなどの設備のグレードを落としたり、浴槽を小さくするなど、希望する仕様を諦めたりすることでリノベーションのコストは抑えられます。ただ、せっかくリノベーションするなら、希望の仕様やデザインを取り入れたいところです。

希望を諦める前に知ってほしいのは「残せるものを残し再利用すること」がコストダウンに最も効果的だということです。たとえば、壁を5㎝動かすとしましょう。わずかな差のようにも思えますが、壁を動かせば床も天井もすべて壁の位置にあわせて工事が必要になるため、コストアップにつながります。

全体のトータル予算を抑えたい場合は、間取りを活かして既存を残すのがベストです。ライフスタイルに合わせた大規模な間取り変更を行う場合でも、必要以上に解体せず、使える部分を活用することで、工事費をカットできます。

図2:リノベーション事例1(リビング・ダイニング)
残す部分と刷新する部分を見極め、暮らしやすさを高めた事例(画像出典:インテリックス空間設計)
図3:リノベーション事例2(収納)
収納の扉を外してカーテンを活用。建具が不要になったことによるコストカットと使い勝手、開放感を実現(画像出典:インテリックス空間設計)

正直なところ、施工側からすれば内装をすべて壊し、スケルトン状態にして造り直したほうが工事の自由度が上がり、効率的なことが多いです。しかし、既存の壁材は下地の状態がよければそのまま使用可能であり、ボードの反りの程度によってはパテで平らにするといった簡易な対応で済む場合もあります。スケルトンにすることが必ずしも最適解とは限りません。

「何を残すか」を考えることは、リノベーションの極意とも言えます。残せるものをいかに見極めるかが、リノベーションにおいて必要とされる「スキル」です。仲介会社には判断が難しい部分のため、リノベーション会社に相談しながら残せるものを見極めていくことが大切です。

2.詳細な見積もりを出してくれるリノベーション会社を選ぶ

リノベーション費用は、基本的に単価に数量を乗じて計算されます。たとえば、フローリングの張り替えであれば「単価×平米数」です。コストダウンしたいなら、フローリングを張り替える部分を狭くすればよいということになります。

そのため、どこにどれだけの数量がかかっているかがわかる、詳細な見積もりを出してくれる会社を選ぶことが大切です。見積もりが簡易的なもので「●●一式」と記載されているような場合は、平米数を減らしてもコストダウンできないことがあります。

なかにはどうしても「一式」としか表記できないものもありますが、それは稀です。測れるものに関しては、数量や平米数、長さなどが見積もりに記載されているかをチェックし、もし記載がない場合には詳細が出せない理由などをしっかり確認しましょう。

ただし、精度の高い見積もりを出すには、ある程度のプランや仕様が決まっている必要があります。内見の前段階からリノベーション会社に相談し、内見の時点でできるだけ精度の高い概算見積もりを提示してもらえると、総予算のブレを抑えやすくなります。

3.リノベーション会社と相性のよい資材・設備を選ぶ

同等のグレードの資材や設備でも、リノベーション会社によって価格は異なります。これはメーカーとの関係性や発注量などによるものです。同じ性能でも、メーカーや商品を変えるだけで、すべてを合計すると数十万円の価格差が出るケースもあります。

また、製品によって値引きできる割合は大きく異なります。たとえば、グレードの高い設備はそもそもの金額も高いうえに、値引きが効きにくい傾向があります。一方で、リノベーション会社が多く扱っているグレードのキッチンであれば、取引量が多いため値引きしやすくなります。こうしたものを選ぶことが、満足度をできる限り損なわずコストを落とすコツの一つです。

4.なるべく人の手がかからない資材や既製品を選ぶ

私は30年ほどリノベーションに携わっていますが、昔はリノベーション用の製品などありませんでした。巾木(はばき)は長さが4mのものしかなく、マンションのリノベーションで使う際にはエレベーターに載らないため階段で運んでいたものです。それが今では2mが主流となり、エレベーターで運べるようになりました。このような工夫の積み重ねで、リノベーションのコストは抑えられてきたのです。

このことからわかるように、運搬や施工の手間がかからない資材を選ぶことで、コストは抑えられます。たとえば、壁は手がかかり材料が重たくなる塗り壁より、軽くて簡便に張れるビニールクロスのほうが安価です。これは、クロスを張る職人が多いこともあります。ドイツでは逆にクロスを張る職人が少ないため、塗り壁が最も安いといいます。

タイルも一つひとつ人が張っていくうえに重くなりやすいため、施工費用が高くなりがちです。ただ最近は一列まとめて張れるものなど、施工の手間がかからない商品も出てきています。こういったものを選ぶことでコストダウンにつながることもあります。

また、造作家具や特注の建具などにこだわりすぎず、既製品の中から希望に合うものを探すことも有効です。特注品はサイズや素材、デザインの自由度が高い一方、製作や現場での調整に手間がかかるため、製作費や施工費が膨らみやすい傾向があります。

既製品は選べる寸法や仕様に限りがあるものの、量産されているため価格を抑えやすく、品質や仕上がりも安定しています。こだわりたい部分には特注品を取り入れ、それ以外は既製品を活用するなど、メリハリをつけることもコストダウンのポイントです。

中古マンションリノベのコストカット術
  1. 残せるところは残す
  2. 詳細な見積もりを出してくれるリノベーション会社を選ぶ
  3. リノベーション会社と相性のよい資材・設備を選ぶ
  4. なるべく人の手がかからない資材や既製品を選ぶ

3. リノベーションのプロ直伝!中古マンション選びのコツ

トータルコストを抑えるためには、リノベーションの工夫だけでなく、中古マンション選びも大事になります。設備や内装と違い、購入後には変えられない部分を中心にチェックするようにしましょう。

維持・管理状態を見る

マンションの共用部は、個人の一存でリノベーションはできません。集合ポストやエントランス、ゴミ置き場などが汚れていたり整理されていなかったりと、物件によっては維持・管理に問題があることがあります。たとえば、定期的な配管洗浄を怠っていれば配管が詰まってしまうおそれもあります。せっかく専有部をリノベーションしても、トイレが詰まって流れないようでは困ります。

物件購入の費用は管理状態の善し悪しでは変わらないかもしれませんが、将来的に修繕積立金が急激に上がったり、大規模修繕工事前に一時金が徴収されたりする可能性があります。したがって、修繕履歴や長期修繕計画も必ず見ておきたいポイントの一つです。

管理規約・リフォーム細則をチェック

リノベーション前提で中古マンションを購入しても、管理規約上、希望する改修ができないこともあります。窓やサッシは共用部にあたるため改修できないというのは多くのマンションに共通しますが、必要以上に厳しいルールを設けているマンションもあるため注意が必要です。

たとえば、マンションによっては、建物の外壁に配管用の穴を開ける「コア抜き」が禁止されています。その場合、エアコンの配管経路が限られ、希望する位置にエアコンを設置できないことがあります。また、追い焚き用の配管を新設できず、給湯器を交換しても追い焚き機能を追加できない可能性があります。

リノベーション会社に管理規約やリフォーム細則を見てもらえば、できる改修・できない改修を教えてくれるので、購入前に見てもらうと安心です。

リノベーションのプロ直伝!中古マンション選びのコツ
  • 共用部はリノベーションで変えられないため、集合ポストやエントランス、配管洗浄の実施状況などから維持・管理状態をチェック
  • 修繕履歴や長期修繕計画に加え、管理規約・リフォーム細則で希望する改修ができるかも必ず確認する

4. 資材を確保できるかは「意思決定の早さ」と「会社選び」で決まる

2026年前半はナフサショックの影響で納入遅れも見られ、一時は受注が止まった製品もありました。流通は回復しつつありますが、欲しい資材や設備を確保するためには、早く意思決定することも大切です。

納期は、発注して初めて出てくるものです。メーカーは一般の消費者には直接販売しないため、検討段階では納期はわかりません。リノベーション会社ですら多くが直接メーカーに発注できず、問屋を通して発注します。そのため、消費者がリノベーション会社に発注をしても、メーカーへの発注までに時間を要する場合があります。

弊社は問屋へ即時発注できるシステムを独自で組んでいますが、こうしたシステムを有するリノベーション会社ばかりではありません。流通が不安定なときは特に、問屋とリノベーション会社の関係値を見極めることも大切です。

一概には言えないものの、取引量、つまり年間の施工件数が多い会社や規模が大きい会社は問屋とのパイプが強く、資材や設備が確保しやすい傾向にあります。

資材を確保できるかは「意思決定の早さ」と「会社選び」で決まる
  • 納期は発注して初めてわかるもの。欲しい資材や設備を確保するには、早めの意思決定が大切
  • 問屋とのパイプが強いリノベーション会社(取引量が多い、設計・施工を自社で担うなど)は、資材や設備を確保しやすい傾向にある

5. 総予算を抑えるためにも「リノベ会社」をしっかり選び、建物の「残せるもの」を見極めよう

リノベーション費用の高騰は、今後も続くものと考えられます。しかし、本記事で紹介した通り、高騰下でも総予算をコントロールする余地は十分にあります。鍵となるのは、リノベーション会社選びと、建物の「残せるもの」の見極めです。早い段階から信頼できるリノベーション会社に相談し、納得のいく「中古マンション購入+リノベ」を実現してください。