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買主に寄り添うバイヤーズエージェント(不動産仲介会社)の本音を聞く!どんな中古物件なら安心できる?

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西生 建

中古住宅には、少なからず不安もあるはず。正直に言えば、日本の不動産流通の仕組みは買主に優しい市場とは言えません。だからこそ、安心して中古住宅を購入するには買主自らがしっかりと中古住宅の特性を知っておく必要があります。

本記事では、安心して中古物件を購入する方法として、物件の見極め方やリスクの高い物件の特徴、逆に安心できる物件の特徴などを、リニュアル仲介 代表取締役の西生 建(にしお たけし)が解説します。

1. 中古住宅購入でよく目にするトラブル

中古住宅の購入後に見られるトラブルとして多いのは、漏水や設備不良などです。引渡し前に不動産仲介会社も確認はしているのですが、想定外のトラブル、売主も知らなかったようなトラブルが起こることもあります。

重大な欠陥は見えない部分に潜んでいる

不動産会社にしても売主にしても、状況を知り得ているのは基本的には見える範囲で起こる現象のみです。特に構造部分については見えませんし、重大な欠陥は目に見えない部分に潜んでいると言えます。漏水が起こる理由も、構造部の腐食や破損であることが多いです。中古戸建てなら、シロアリ被害も気になるところ。目に見えないとはいえ、欠陥にはなんらかのサインが見られるケースもあります。たとえば、蟻道や外壁のクラックなどです。こういったところにも着目して、トラブルを回避してほしいと思います。

意図したリノベーションができない

リノベーション前提で中古住宅を購入される人も多いですが、買った後に「意図したリノベーションができない」というトラブルも少なくありません。

水まわり設備は動かせないことも多い

マンションで大掛かりなリノベーションを考えている方は気をつけていただきたいのですが、キッチンやトイレ、浴室などの水周り設備は自由に動かせないこともあります。間取りを一新するつもりだったのに、後から水周りを動かせないと知る人は少なくありません。動かせる範囲は、配管の状況次第となるほか、管理規約などで縛られている場合もあります。

エアコンが付けられない

バブル時代のマンションに多いのが、セントラルヒーティング。全館空調です。分譲時にセントラルヒーティングが導入されているマンションは、各居室に個別の空調設備を付けることを想定していません。新たにエアコンを入れるとしたら、電源を取る場所や室外機を置く場所の問題が発生します。

ユニットバスが入れられない

これもバブル時代の高級物件に多いのですが、タイルや大理石張りの在来工法の浴室にユニットバスを入れるとなると、解体や撤去に時間と費用がかかります。ユニットバスは、規格商品です。浴室に限らず、規格に当てはまらない設備が入っている中古住宅のリフォーム・リノベーションは難航する傾向にあります。

中古住宅購入でよく目にするトラブル
  1. 漏水
  2. 設備不良
  3. 意図したリノベーションができない

2. こんな中古物件には気をつけて!リスクの高い物件の特徴とは

住まいに求めることは皆さんそれぞれですが、「耐震性」「災害リスク」「メンテナンスや修繕のしやすさ」の3つについては、よく吟味することをおすすめします。

いびつな形の旧耐震基準マンション

まず、中古住宅が建てられた時期に着目してください。1981年5月以前に建築確認申請が受理されている建物は、旧耐震基準で建築されています。とはいえ、旧耐震基準の物件が全て危ないということではありません。旧耐震基準の中でも、形状がいびつなマンションは特に耐震性が低いと言われています。たとえば、旧耐震基準かつ1階部分が柱だけのピロティ構造のマンション、L字型のマンションなどは避けたほうがいいと考えます。

災害リスクの高い物件

マイホームを持つうえでは、ゲリラ豪雨や大規模地震など、昨今、多発化、激甚化する自然災害に備えることも大切です。これは中古住宅に限ったことではありませんが、物件自体の性能とともに「災害リスク」も必ず確認しておきましょう。国土交通省の「重ねるハザードマップ」では、洪水や土砂災害、津波などのリスクがエリアごとにわかりやすく表示されています。特に旧耐震基準の物件を購入する場合には、地盤の強さを確認してほしいと思います。

コンクリート造の築古戸建て

木造の一戸建てに関しては、建物の状況を検査して、修繕すればいくらでもリスクヘッジできます。しかし、コンクリート造については改修できる範囲が限定的です。検査はできても修繕しにくいという点で、コンクリート造かつ築古の一戸建ては調査をしないと、ややリスキーだと考えます。

リスクの高い物件の特徴
  1. いびつな形の旧耐震基準マンション
  2. 災害リスクの高い物件
  3. コンクリート造の築古戸建て

3. プロが考える「こんな中古住宅なら安心!」

中古住宅を購入するときの「安心」を見極めるには、さまざまポイントがあるので一概には言えませんが、次のような物件は比較的、安心できる物件だと言えるでしょう。

かし(瑕疵)保険付きの中古住宅

かし(瑕疵)保険とは、購入後、補修が必要になった場合に高額になりがちな、建物の構造で重要な部分の不具合を補償してくれる保険です。

図表1:かし(瑕疵)保険の対象
概要図
かし(瑕疵)保険は、万一の補修が必要な場合に高額になりがちな、漏水や建物の構造で重要な部分の不具合を補償する(図:住宅あんしん保証の図を元に中古住宅のミカタ編集部作成)

買主が不動産会社や検査機関に加入をお願いすることもできますし、「かし(瑕疵)保険付き」として販売されている物件もあります。ただ、数は非常に少ないのが現状。この理由は、売主側の不動産仲介会社が率先して付けようとしていないためです。

かし(瑕疵)保険を付帯するには、建物検査を受ける必要があります。やはり不動産仲介会社からすれば、時間がかかり、見えていなかった欠陥が明るみになる可能性のある検査に対して前向きではありません。そんな中でもかし(瑕疵)保険を付帯してくれる物件であれば、買主にとって大きな安心となるでしょう。

2000年築以降の一戸建て

木造一戸建てに関しては、1981年からの新耐震基準ではなく「2000年基準」が最新の耐震基準です。新耐震基準にはなかったバランス計算の義務化、偏心率の規定化、接合部の指定などにより、これ以降、木造一戸建ての耐震性は大きく向上しました。2000年6月以降に建築確認申請が受理された木造建築物は、この基準を満たしています。とはいえ、そもそも耐震基準とは最低限、満たさなければならない基準ですから「絶対安心」とは言えません。しかし、中古戸建てを選ぶ際には、必ず頭の中に入れておくべきだと思います。

資産価値が維持できる中古住宅

中古住宅に限ったことではありませんが、不動産を購入するときは「資産価値が維持できるか」という視点を持つことも大切です。資産価値が維持できるかどうかを大きく左右するのは、立地。「立地は性能を凌駕する」と私は考えているのですが、たとえば旧耐震基準のマンションでも、主要駅から徒歩1分であれば資産価値は維持できます。総じて、立地のいい物件は築年数が古いと言うこともあります。これは、開発時期が早いからという理由です。もちろん、耐震性や住宅性能は高いほうがいいでしょう。しかし、利便性のニーズがそれらを上回るのであれば、築古の物件も選択肢に入ってくるのではないでしょうか。

安心して購入できる中古住宅の特徴
  1. かし(瑕疵)保険付きの中古住宅
  2. 2000年基準の一戸建て
  3. 資産価値が維持できる中古戸建て

4. リノベーション前提で中古住宅を購入するときのポイント

冒頭で話したとおり、中古住宅を購入した後のリフォームでトラブルが発生することも少なくありません。リフォーム前提で中古住宅を購入するときのポイントは、次の通りです。

「できるリフォーム/できないリフォーム」を確認

買った後に構造の問題やマンションの管理規約などにより「意図したリフォームができない!」となってしまうことを避けるには、リフォームの見積もりまで取ってから購入を判断すべきです。しかしながら、日本の不動産流通市場の悪いところで、購入を決めてからでなければ一般的にはリフォームの見積もりを入れることはできません。一方で、近年ワンストップで中古住宅の購入からリノベーションをサポートしてくれる会社は増えており、そのような会社に相談をするといいと思います。それ以外に「できるリフォーム/できないリフォーム」を知るには、不動産会社に聞くしかありません。率先して教えてくれなくても、調べてもらうことはできます。

「やりすぎリノベ」には注意

最近では個人の売主自らがリノベーションをした住宅が流通し始めています。そういったリノベーションされた住宅の中には、少し「やりすぎ」な物件もあります。やりすぎとは、つまり個性的すぎるということです。以前、私が案内した物件で、すべての間仕切り壁が天井に届いていない住まいがありました。売主いわく「どこにいても家族の気配が感じられる」とのことでしたが、思春期の子どもがいらっしゃる家庭などにはまず選ばれません。自分たちが気に入ればいいという考えもありますが、個性が強すぎる物件は売りにくいということを理解したうえでリノベーションしましょう。

リノベーション済み物件も選択肢の一つ

自分でリノベーションすると、どうしても万人受けする改修が難しくなります。また、先の通り、自分が希望するリノベーションができないこともあります。こういったことを踏まえれば、すでに宅建事業者でリノベーションされた中古住宅を購入するのも一つの選択肢になってくるでしょう。リノベーション済み物件は、実物を見たうえで購入できます。事業者独自の保証が付いているなど、個人間売買と比較して、かし(瑕疵)保険に加入している物件も圧倒的に多いものです。

リノベーション前提で中古住宅を購入するときのポイント
  1. 「できるリフォーム/できないリフォーム」を確認
  2. 「やりすぎリノベ」には注意
  3. リノベーション済み物件も選択肢の1つ

5. 安心して中古住宅を購入するには不動産会社(エージェント)選びが大切

日本の中古住宅市場は、安心して中古住宅を購入できる仕組みがまだまだ整っていない、買主に優しくない市場です。“弱者”である買主を守るのは、不動産会社の役割。安心して中古住宅を購入するには、物件選びと同様に、不動産会社選びが重要になってきます。

たとえば、かし(瑕疵)保険やリフォームの知識。このような情報を提供する以上に、日本の不動産会社の多くはいい物件を集めることに執着しています。いい物件を集めさえすれば、仲介手数料がもらえる……だからこそ、物件の質を高めたり、安心を付帯することは二の次になってしまうのです。残念ながら、米国などと比較して中古住宅市場がこれまで小さかった日本では「いい物件を流通させる」「売主・買主の利益を守る」という意識が低い傾向にあります。

とはいえ、弊社のように「買主に寄り添う!」と宣言している不動産仲介会社もあるわけです。日本の不動産市場も、徐々にですが変わり始めています。買主の利益を考えてくれる不動産会社、不動産エージェントもたくさんいます。中古住宅を安心して購入するため、そんなパートナーと出会っていただきたいですし、日本の不動産流通の仕組みがより買主に優しい市場になるよう、私たちも努力を続けていきます。

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西生 建 (にしお たけし)
住宅情報誌出版会社、建設会社を経て、平成8年エイム(株)設立に携わり、平成20年5月代表取締役就任。日本木造住宅耐震補強事業者協同組合の設立にも携わる。平成23年11月にはエイム(株)より事業独立し、リニュアル仲介(株)を設立。同社代表取締役。