不動産価格は、2025年もマンションや新築住宅を中心に高騰を続けました。金利上昇の機運も高まっていることから、マイホームの購入に悩んでいる人も多いのではないでしょうか。
しかし、2026年の幕開けとともに、その常識が大きく変わろうとしています。2026年度税制改正による、中古住宅取得における住宅ローン減税の劇的な拡充の発表。これにより、中古住宅はもはや新築の代わりではなく、賢い買い手にとって、“より優先度の高い選択肢”へと昇格します。
そこで今回は、2026年の新春予測として(一社)リノベーション協議会 会長でu. company(株)代表の内山博文(うちやま ひろふみ)が、激変する市場でのマイホームの購入戦略を前後編2編に分けて紹介。
前編の本記事では、価格、金利、そして過去最大級の追い風となる「減税制度」の観点から中古戸建てが今年の“本命”と言える理由について解説します。2026年に入ってすぐの入居から対象となる見込みの最新情報も必見です。
1. 【理由1】価格高騰、金利UPの今こそ!中古戸建ての「価格安定性」に注目
中古戸建てが2026年の“本命”となる理由の一つ目は、中古戸建ての「価格の安定性」にあります。
マンション・新築住宅は著しく高騰
不動産価格の動向を指数化したデータによれば、2025年のマンション価格は2010年比約2.2倍ですが、一戸建ては1.5倍にも届きません。とはいえ、2000年以降、建築費は1.5倍ほどまでに高騰しており、一戸建ての中でも新築は手が届きにくい「高嶺の花」と化しています。供給数が減り続けていることが、新築住宅の高騰を下支えしているとも言えます。
図1:不動産価格指数

中古戸建ての「安定性」
マンションや新築住宅の価格は、需給バランスや消費者の所得が上がったという理由で高騰しているわけではなく、都市部の地価の上昇や建築費の高騰、投機目的による購入が増えたことなどに起因します。一方、投機目的の取引が目立つ湾岸エリアでは在庫が増えマンション価格が崩れるのを懸念した買取再販事業者が利益を削って早期に販売するような動きも見え始めており、今後、資産価値が下がるリスクがあります。
<キーワード解説・用語集>
買取再販<買取再販住宅についてもっと詳しく>
不動産会社が販売するリフォーム・リノベーション済み中古住宅「買取再販住宅」ってどうなの?そのメリットは?地価も近年、上昇傾向にあるものの、この10年、20年で1.5倍や2倍になっているエリアは限定的です。また、現状、中古戸建ての建物部分は様々な要因で評価されにくいため狙い目と言えます。
建売戸建ての価格はこれまで急上昇することはなく、緩やかに上昇し続けていることから、今後も急激に落ちるとは考えにくい状況です。とはいえ物価上昇に対し、日本人の平均所得は追いついておらず、所得に対する住居費の負担が増している状況においては、中古戸建ての価格の安定性は将来的な安心につながるはずです。
<住まいの最新事情についてもっと詳しく>
新築はなぜここまで高騰しているのか。中古住宅の資産価値と賢い購入術金利上昇により住宅ローンの返済リスクも高まる
不動産価格の上昇は、低金利がある程度、下支えしたのも事実です。しかし、2024年に日本銀行がマイナス金利政策を解除して以降、4度の利上げが実施されており、住宅ローン金利も上昇局面にあります。変動金利のベースとなる政策金利については、2026年末までに1%程度まで上昇するとの予測もあります。
物件価格によりますが、返済額を変えないことを前提とすれば、金利が0.1%上がると購入できる物件の価格が数十万円下がることになります。バブル崩壊以降、数十年にわたって金利が下がり続けていたこともあって、将来的に上がる可能性を考慮せずに借入限度額あるいは返済可能額いっぱいに借りるケースも見られますが、今の金利動向を考慮すればリスクが高く、将来的に返済できなくなる可能性も否めません。
加速する「中古シフト」:2026年度税制改正で住宅ローン減税が新築同等「13年」に
金利上昇への不安がある一方で、2026年から中古住宅市場にとって非常に大きな「追い風」が吹き始めます。2026年度税制改正により、中古住宅の取得における住宅ローン減税が大幅に拡充されることが発表されました。
これまでの制度では、中古住宅の取得は新築に比べて控除額や期間が抑えられていました。しかし2026年以降の入居分からは、省エネ性能が高い中古住宅(認定住宅、ZEH水準省エネ住宅)を取得する場合、税額控除の額の算出における「借入限度額」が最大4,500万円(子育て世帯等の場合)まで引き上げられ、控除期間も13年間に伸長。これまで買取再販事業者からの購入物件のみ13年でしたが、中古住宅の取得も省エネ基準に適合する物件(認定住宅、ZEH水準省エネ住宅、省エネ基準適合住宅)であれば13年に伸長されます。
さらに、これまで新築のみに適用されていた床面積の要件「50㎡以上」を「40㎡以上」に緩和する措置が中古住宅にも拡充。コンパクトな中古マンションを選択する方にとっても、減税の恩恵を受けられる間口がぐっと広がりました。
「物件価格の安定性」に加え、この「強力な税制優遇」が2026年1月1日以降の入居分から適用されることとなり、まさに「中古戸建て元年」と呼ぶべき手厚い支援が始まります。
<【あわせて読みたい】住宅ローン減税の条件や必要書類を詳しく解説>
新築同等まで拡充!2026年度住宅ローン減税で「中古住宅」が優位に!? !改正の内容と手続き・必要書類を解説2. 【理由2】法改正の混乱をチャンスに!中古リノベは「合理的で早い」選択肢
「流動性が高いのはマンション」というイメージがあるかもしれませんが、中古戸建ての流通量は増加傾向にあり、選択肢も多い状況です。一昔前まで、一戸建てよりマンションのほうが流動性は高かったのは事実です。しかし、さまざまなインフラが整備されたことと、リノベーション技術の進歩などもあって一戸建ての“出口”が取りやすくなりました。
加えて、2025年の建築基準法改正によって新築市場に混乱が見られていることからも「中古住宅+リノベーション」は合理的で早い選択肢と言えます。実際に、2025年7月から9月の東日本不動産流通推進機構(レインズ)のデータによると、首都圏の中古戸建て成約件数は前年同期比54.3%増と、7期連続で増加しています。一方で成約価格は前年比0.6%下落(平均3,904万円)とほぼ横ばいながらも3期連続で下落しており、52期連続で価格上昇を続ける中古マンション(平均5,314万円)に比べて割安感が鮮明になっており、需要が一戸建てにシフトしていることが数字からも明らかです。
図2:中古戸建ての成約件数・成約価格・在庫件数

2025年建築基準法改正で新築の建築確認申請が停滞
建築基準法改正の影響で、2025年4月以降、建築確認申請や許認可が遅延し、新築の着工・供給に遅れが出ています。感覚的には、従来と比べて許認可までに2ヶ月ほど長くかかっている印象があります。
まず、審査がより厳格になったことで、設計者は構造計算や省エネ性能を含めた検討に時間を要することになりました。加えて申請前の省エネ適合性の判定や指定確認検査機関との事前協議が長引くうえに、検査機関の人材不足も少なからず影響し、なかなか受理してもらえない状況になっています。
<建築基準法改正についてもっと詳しく>
2025年4月の建築基準法改正でリフォームにも影響が!?「4号特例」縮小で変わること「中古リノベ」の優位性は高い
リノベーションは建築確認申請が不要なケースも多くあります。建築基準法改正の影響を受けず、数ヶ月間を要する建築確認申請が不要であれば、工期は「設計+施工期間」だけで済みます。大きな改修でも、新築と比べて半分以下の工期になるので早期に入居したい方にとっても大きなメリットではないでしょうか。
建築確認申請が不要で工期が短いと、その分コストも大幅に抑えられます。工期、コスト、両面から見ても「中古住宅+リノベーション」の優位性は高いと言えます。
リノベーションでも、主要構造部(壁・柱・梁・床・屋根・階段)それぞれの過半を占める(2分の1を超える)改修には建築確認申請が必要ですが、この点については業界内でも勘違いが多く、正確な情報が十分に浸透していない状況です。たとえば、屋根や壁の仕上げ材をすべて変えたとしても、あくまで表層部分の改修であることから、主要構造部の過半にはあたりません。実際には、一般にイメージされる「リノベーション」の多くが建築確認申請をせずに施工できます。
<建築確認申請が必要なリノベーションについてもっと詳しく>
2025年建築基準法改正があなたのマイホームに与える影響とは? よくある誤解6選<「中古戸建て購入+リノベーション」についてもっと詳しく>
いま「中古戸建て購入+リノベ」を専門家がすすめる理由。安心・快適な住まいのためにできることリノベーション技術の進歩
いくら安く、工期が短くても、性能や品質に関しては新築住宅のほうが優位性は高いと考える人もいるかもしれません。しかし、リノベーション技術の進歩によって、いまや中古住宅を新築と同等やそれ以上の性能に上げることも可能です。新築住宅の高騰、供給数の減少を受け、工務店側も積極的にリノベーションにおける省エネ技術を含めた性能向上のノウハウを習得し始めており、選択肢も増えています。
また、古くなった建物の性能や品質が低いというのはまったくの誤解です。しっかり建てられた躯体性能が高い建物は、適切に管理され、劣化がなければ、築年数が経っても性能は低くなりません。
ただし、中古戸建てには「状態がわからない」ゆえの不安が生じるものです。状態をしっかり把握し、状況に応じた改修内容を検討するには、購入時の検査(インスペクション)が欠かせません。

3. 【理由3】省エネ性能が資産価値に。既存不適格にしないために求められる性能
近年、政府が2050年カーボンニュートラルの実現に向け、住宅の省エネ化を強く推進していることもあって、住宅の省エネ性能が急激に高まっています。省エネ改修を検討する際は「次世代」の基準を視野に入れることで、快適性だけでなく、資産性の維持・向上も見込めます。
2030年以降「断熱等性能等級6」未満は既存不適格に!?
2025年4月から、すべての新築住宅に省エネ基準適合が義務づけられています。しかし、これは単なる通過点にすぎません。2030年度までに省エネ基準はZEH(ゼッチ)水準に引き上げられる予定のため、2030年度以降、ZEH水準を満たしていない住宅は既存不適格(建築当時は適法で建築された建物が、その後の法改正などによって現在の法律や基準に合わなくなった状態)のような扱いになる可能性があります。
ZEHの新定義「GX ZEH」
2025年9月には、ZEHの新定義となる「GX ZEH(ジーエックス・ゼッチ)」の概要が発表されました。現行の義務化による省エネ基準の断熱等性能等級は「4」、現行ZEHは「5」ですが、GX ZEHはより性能が高い「6」が基準となっています。
<キーワード・用語解説>
省エネ基準つまり、将来的に「断熱等性能等級6」未満は既存不適格ともいえる水準と見なされる可能性があります。今後断熱性能を向上させるなら、断熱等性能等級6は最低ラインになってくるでしょう。
省エネ性能が「資産価値」に
GX ZEHは、断熱等性能等級以外に、一次エネルギー消費量や省エネや設備などの要件も厳格化しています。すでに、次世代の断熱性能・省エネ性能を見越した新築住宅も少なからず見られています。
現状、中古住宅の義務化の省エネ性能基準はありませんが、今後さらに中古でも「高性能な家」と「そうでない家」で資産価値が2極化していくことになるでしょう。中古住宅の断熱改修は、快適性の向上や光熱費削減などの効果に加え、資産価値を向上させる効果も見込めます。
税制面でも「高性能な中古」が圧倒的に有利に
こうした「将来の資産価値」に加え、2026年からは「購入後のランニングコスト」でも高性能な中古住宅が圧倒的に有利になります。
前述の通り、2026年度税制改正では、中古住宅の住宅ローン減税における「省エネ性能による格差」がより明確になってきました。省エネ基準を満たす中古住宅の控除期間が「13年間」へと伸長されたり、子育て世帯や若者夫婦世帯のZEH水準の中古住宅取得時の借入限度額が最大4,500万円まで引き上げられたりすることが発表されました。
これにより、最大控除額は400万円を超える規模(13年間累計)となり、「性能が低い家を安く買う」よりも「性能を高めて買い減税をフルに受ける」ほうが、トータルコストで安くなる逆転現象が起きる可能性があるのです。
4. 変動の激しい年だからこそ、背景を知り、後悔のない選択につなげよう
コスト・工期、そして2026年から拡充される「住宅ローン減税」という強力な経済的メリット。これらを総合的に判断すれば、中古戸建ては2026年においてより合理的な選択肢であり、“本命”と言えます。
気になる性能面(耐震性や断熱性)やデザインも、リノベーションによって向上することができます。法改正や金利動向なども考慮しつつ、減税の恩恵を最大化し、将来の資産価値を守るためには、「どの物件を選び、どうリノベーションするか」という見極めがこれまで以上に重要になります。将来のリセールバリューにおいても省エネ基準はより重要視される可能性が高まったと言えるのではないでしょうか。
続く後編では、この激動の2026年に「中古戸建て購入+リノベ」で成功するための具体的なポイントを解説します。物件の条件や、信頼できるパートナー(会社)選びの極意など、実践的な戦略に踏み込んでいきましょう。